大久保賢一@畿央大学のブログです。特別支援教育、応用行動分析学(ABA)、日々のつぶやき等。
現在、ABAI(国際行動分析学会)へ参加するためにアメリカ・コロラド州のDenverに来ています。
学会に関するレポートはまた帰国後にしようと思います。

少し間が開いてしまったのですが、情報がどんどん古くなってしまうので、飛行機の中で書いた被災地支援のまとめを記事にしたいと思います。

第2弾は発達障害のある子どもの保護者に関してです。
5月上旬時点において現地で得られた情報を要約すると、以下のようなことをあげることができます。


1.震災直後、保護者は「子どもから離れたくない」という気持ちになる傾向がある。しかし、家が手に負えない状況であるため、子どもの安否が確認された後も、しばらく保護者が子どもを引き取りに来ることができないケースがあった。

2.避難所で継続的な集団生活を送ることが難しいため、在宅を余儀なくされるケースもあり、孤立していく家族があった。

3.避難所生活の中では、「発達障害」に関連する支援ニーズやSOSを出すことが難しい状況があった。

4.避難所の利用が難しい場合、親戚宅に身を寄せる家族があったが、以下のような問題があったために、親戚宅にも居場所を得られないケースがあった。
・親戚一同が集まって生活をする際の「大人同士の諍い」が子どもに悪影響を与えるという問題。
・親戚の子どもも長時間一緒にいて「比較対象」ができるため、これまで祖父母などに対して伏せていた子どもの障害が明らかになってしまうという問題。


5.保護者に支援ニーズを尋ねても「私たちよりも大変な人がたくさんいる」という言葉が返ってくるばかりであり、支援ニーズがなかなか出てこない状況が見られた。そのため家族が必要とする支援物資でも、底がつくまでSOSが出てこないので、調達する時間の間は欠乏期となってしまった。

6.被災地である岩手沿岸部と宮城沿岸部では、「発達障害(特に知的障害を伴わないもの)があること」を地域の中で公にしづらい状況があり、親のネットワークも希薄であった。そのような土壌もあり、保護者の孤立傾向が高まっていると思われた。逆に仙台市は親のネットワークができていたため、被災後も親同士が支え合うという事例が認められた。

7.父親が仕事の再開に懸命になっている家族においては、学校開始までの母親の負担が非常に重くなるケースが認められた。

8.特別支援学校に自家用車で通学していた場合、車が流されてしまったために、学校が再開しても通学に困難が生じた。地域のバス運行が再開しても常時満員のために利用できないという状況が認められた。

9.発達障害の子どもを育てているがゆえの経済的負担があった。それらは大きく分けて「余暇」、「車(移動手段)」、「住宅」、「発達障害に特化した支援ツール」に関連する4点であった。

10.保護者が必要とする支援物資のニーズは3日単位で変化していた。時間が経過するほど、ニーズが個別化されていく傾向が認められた。


以上のような状況を踏まえ、以下のような支援や工夫が必要であると考えられました。



◆震災後に、障害のある子どもとその家族が安心して過ごすことのできる生活の場(避難所)を保証するための工夫が必要。二次避難所の設置のあり方の検討などが求められる。

◆避難所での支援の呼びかけに関しては「障害」という言葉をできるだけ用いない工夫が必要があると思われた。
例えば、「子どもさんの様子や行動でご心配やお困りがある方」など工夫した呼びかけ。

◆福祉避難所の事前指定、さらには特別なニーズ別に避難所を設置するなどの柔軟な措置を緊急時に実現できるような工夫が必要。

◆震災時の親の孤立、すべてを自分で抱え込まざるを得ない状況、SOSの発信控えを回避するためにも、地域の親のネットワークを日頃から整備しておく必要がある。

◆発達障害であるが故の困難さがあることを周囲に理解してもらうための手立てを工夫することが必要。例えば、震災後の一定期間のみ有効な「要配慮カード」を配布するなど。

◆交通手段を失った家族に対する通学支援が必要。

◆障害児の家族に対する緊急時の一時的な経済的援助を工夫する必要がある。
※具体的には、特別児童扶養手当の増額を期間限定で実施することなどを検討できないか?

◆震災後、一定程度時間が経過した時点からは、個別ニーズに対応した形で支援物資を送り届けるためのシステム整備が必要。例えば、被災地に近いNPOや親の会を支援ニーズ把握と物資供給の拠点とし、その拠点に対して全国規模で経済的バックアップを行うなど。



5月中旬以降の状況をきちんとフォローできていないので、上の状況は変わっている場合がおおいにあり得ると思いますし、提案に関しても既に実行されていることがあるかと思います。

そのような場合には、現地の最新情報について私に教えていただければ大変有り難いです。


【2011/05/31 08:51】 | 被災地支援
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東北から北海道へ戻り、もう1週間が経つのですが、溜まっていた仕事に忙殺され、今頃になり疲れが出てきました

はやく被災地支援の報告書をまとめなくてしまわないといけないのですが、その前に自分が現地で見たこと、聞いたこと、考えたことを整理しておく必要性を感じています。

その第1弾として、現地の「発達障害のある子どもたちの様子」についてまとめたいと思います。


oofunato
↑誰かが飾った鯉のぼりがとても印象的な光景でした



子どもたちの様子について、ざっとまとめると主に以下の4点をあげることができます。

①避難所で継続的に生活できた事例はほぼ皆無であった。多くは自宅に戻ったり、車中泊をしたり、親戚宅を頼るなどしていた

②災害直後は、周囲の予想を上回り、落ち着いている子どもが多かった

③震災前には見られなかった反応を示す子どももいた
→自傷を行ったり「ごめんなさい。もうしません」を連呼するなど
→トイレに行けなくなった


④知的障害のないタイプの発達障害児者に関する状況は、行政レベルではほとんど把握されていなかった


まず、①についてですが、一部マスコミでも報道されていた通り、避難所で地域の方々と共同生活を送るということは、かなり難しいことのようでした。
子どもが騒いでしまうということ(避難所が体育館だったりすれば、子どもは「目一杯遊ぶところ」だと思ってしまう場合があるようです)、避難所における持ち回りの役割を保護者が果たせなくなってしまうことなどが理由としてあげられていました。

②の「予想以上にみんな頑張っていた」というのは、大体どこに行っても聞かれた言葉です。

しかし、生活が元に戻るにつれて、③のような問題が出てくる場合があるようです。
「ごめんなさい、もうしません」というのは、災害の原因が自分にあると誤って理解し、「もう悪いことは何もしないから、勘弁して!元に戻して!」と伝えたいのだと思われます。
切ないですね。

中には、津波で潰された自宅を何度も何度も見たがる子どもがいました。
このお子さんは、言語理解が難しいお子さんでした。

親御さん曰く、「もしかしたら、我々が日常で地震や津波のことを何度も口にし、耳にすることで、現実として受け入れていくことを、この子は言葉がわからないので、視覚を用いて反復的に経験して納得しようとしているのでは」。

なるほど、それはそうなのかもしれません。
その証拠と言えるかもしれませんが、ある時期から、自宅を見ようとすることはなくなり、津波によって泥に埋まってしまった「こだわりグッズ」にも別れを告げることができたそうです。


④についてですが、情報は各小中学校や地域を巡回する特別支援教育コーディネーターの段階で、留まっていることが推測されました。
この辺りの学校のシステムに関しては、また別の記事でまとめたいと思います。

それと印象的だったのは、特に岩手沿岸部の地域においては、「皆が顔見知り」という雰囲気があるということでした。
このことは、「発達障害」というラベリングが、スティグマに繋がりやすく、従って特別支援教育を受けることが「忌むべきこと」として捉えられるかもしれないということを意味します。



【2011/05/21 21:11】 | 被災地支援
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井上先生のブログからの引用です。
私もこのご家族にお会いしたので、是非、届けてあげたいと思っています。


被災地で家が全壊したこどもたちのなかで大切にしていた心の拠り所となるグッズをなくしてしまったこどもがいます。
支援物資としては大人から見れば生きていくのに無価値なものかもしれませんが、彼らにとっては大切なものです。

以下のものをお持ちの方で譲ってあげられるかたはコメントいただければと思います。

○グリコのおまけの本
○NHK関連グッズで天才テレビ君関連のもの


グリコのおまけの本とは恐らくこれのことだと思います。→クリック

「提供してもいいよ」という方がおられましたら、Twitterかメールでご連絡いただければ有り難いです。

どうぞよろしくお願いします。

【2011/05/14 13:45】 | 被災地支援
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グリコのおまけ
GONママ
大久保先生
お世話になりました。
「グリコのおまけ」のお子さんのことは一陣の時にも話題になっていました。
グリコの博物館があるようですがお願いできないでしょうかね?


大久保賢一
グリコの博物館!?
へえ~、ちょっと調べてみますね。

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被災者をNPOとつないで支える合同プロジェクト(つなプロ!)の報告書に目を通しました。
つなプロのページに行くには、上のバナーをクリックしてください。

「宮城県の避難所アセスメント」第4週(4月18日~4月24日)に関する分析速報→
クリック


食生活


・客観的にみれば、改善が必要であると思われる状況においても、「「食べられるだけでありがたい」という意識があるよう
・副食の提供は一日一回の弁当が中心

※数日前にはこんな記事も→
エネルギー摂取不足、避難所の9割…食生活調査


衛生環境

1カ所の避難所から7名の下痢・嘔吐の感染が見つかる
・避難所12カ所中、5カ所でトイレの状況が悪化。



情報の伝達・共有

・市町村と避難所管理者、避難所と自宅避難所の間で課題がある
・担当者の引き継ぎが不十分
・避難所を出た人とのネットワークを築くことが難しい



障碍者・こども

・障碍のある人が避難所に入居しても、周囲の協力が即座に取られている
・避難所を出た人の現状把握ができていない
・子どもに対する心のケアやレクリエーションの必要性が生じつつある



私なりにさらに要約すれば

1.物資に関するニーズは表に出てこない場合が多々ある(「客観的に考えれば必要性があるのに当事者が声に出さない」というケースがたくさんあるということ)

2.物的な支援と合わせ、意識しなければならないのは「情報」に関する不公平さをなくすこと

3.避難所を出た人への支援について検討することが課題

4.子どもを中心に「心のケア」に関するニーズがある


とりあえず「障碍のある人」に対しては、周囲の協力が即座に取られているということで安心しましたが、一方でこんな記事もあります。

東日本大震災:発達障害児の親孤立 避難所避け届かぬ支援


・夜泣きの苦情を恐れ、車中で夜を明かしたこともあった。
・障害が見た目には分からず、娘が騒ぐと『しつけが悪い』と言われる
・「なんで大きい子が」「また来た」。冷ややかな目線を感じ、いたたまれなくなった。
・「いっそ家と一緒に流された方がよかった」とさえ考えた

現状ではもちろん難しいことはたくさんあるでしょうが、こういった声をできる限りなくしたいと思います。





【2011/05/02 15:40】 | 被災地支援
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