大久保賢一@畿央大学のブログです。特別支援教育、応用行動分析学(ABA)、日々のつぶやき等。
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本日、「上川地域作りフォーラム」における講演「新たな絆-東松山市の学校教育の取り組みから-」に参加してきました。
(記事のタイトルは講演の正式なお題ではなく、私が勝手につけたもの)

講師は東松山市の地域福祉課の課長さんです。

埼玉県の東松山市といえば、平成19年度、特別支援教育がスタートすると同時に就学指導委員会の撤廃を決定し、本人や保護者が希望する学びの場への就学を可能にしたということで大きな注目を集めていました。

現在、「障がい者制度改革推進会議」において議論になっている「インクルーシブ教育」の先駆けとして位置づけられることもあるのではないでしょうか?
ohkubo14.blog103.fc2.com/blog-entry-15.html参照。


講師の方は、福祉サイドの立場から、インクルーシブ教育を推進してこられたということで、国際動向の要約とともに、以下の点を話されていたことがとても印象深かったです。


・福祉と教育の協同を阻む要因として、そもそもその目的が違っていることがあり、その差異は法律上でも明らか(教育は「障害克服」、福祉は「共生社会」)

・就学支援委員会撤廃までの経緯として、教育委員会は最初反対していた

・反対の理由としては、「親の希望だけで子供を十分な配慮のない場へ放り込むことになる」、「障害のある子どもへの配慮に労力を割くことになり、学級経営ができなくなる」

・「就学指導委員会の撤廃」を強引に進めた結果、福祉と教育の間に、一旦は大きな溝ができてしまった


・しかし、「皆が同じ場にいるということ」で、教育サイドの意識も変わっていくように思う

以上、全て私が「聞いてみたかったこと」であり、とても率直にお話になっていただいたと思いました。
しかし、私が気になったのは、「学びの場を同じにした“その先”」についてです。


本人の希望なり保護者の希望なりで通常学級に在籍することになった障害のある子どもたち、特に、いわゆる重度の障害がある子どもたちは、具体的にどのように教室で過ごしているのでしょうか?


介助員が付くといっても、それだけで全ての参加や学びが保障されるのでしょうか?
(当然、特別支援学校に就学したからといって、「全て保障」されるわけではありませんが・・・)

全くわからない授業が行われている教室に「ただ居続けなければならない」という状況はないのでしょうか?

クラスメイトが行っている活動を「ただ見ていなければならない」という状況はないのでしょうか?



その辺りのことを講師の方に質問してみたところ、「介助員は必ずしも専門性のある人ばかりではなく、“質の部分”については今後の課題である」と、これまた率直にお答えくださいました。

この辺りの「教育の質」に関する課題については、今後も取り組まれていくのだと思われますが、私も教育に携わる当事者の一人として真剣に考えていかなければならないことだと思いました。


日本の特殊教育・特別支援教育においては、これまで教育の場を分けることによって、「障害児教育」が行われてきたわけですが、私個人的には、各種障害種ごとに蓄積されてきた知見や専門性には大きな意義があり、無視するわけにはいかないと考えています。

私は、インクルージョンの理念自体に対しては大いに賛同します。

しかし、イデオロギーの賛否だけではなく、これまでの「分離教育」の中で、ある程度保障されていた教育効果と同様の効果を、インクルーシブ教育においても保証できるのか否かについては十分な議論が必要だと思います。

※前提として、「教育効果」の定義そのものにも議論が必要ですが・・・


例えば、インクルーシブ教育の普及によって、分離教育の時代よりもかえって自立と社会参加機会が低下するという理念的破綻が生じており、新たな差別を発生させている(中村・岡,2005)という、ある意味でとても「皮肉な」報告もあります。
(文献には全文テキストへのリンクあり)

インクルーシブ教育を推進するためには、「どこで学んだか?」ということと同時に、「何を、どのように学ぶことができたのか?」ということについて、検証と議論を積み重ねていくことが必要だと思います。

最後に・・・
講師の方の「物事を進めるためには、まずはやってみなければならない」というお言葉は、まさにその通りだと思います。

しかし、今まさに学校で学んでいる子どもたちが「改革のための“人柱”」に決してならぬよう願いつつ・・・、東松山市のチャレンジに敬意を表し、応援したいと思います。



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【2011/03/05 18:08】 | 教育問題
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