大久保賢一@畿央大学のブログです。特別支援教育、応用行動分析学(ABA)、日々のつぶやき等。
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 今年度、大阪府と和歌山県でスタートした強度行動障害支援者養成研修は、先週大阪で第3回、和歌山で第2回を終え、いよいよ実際に支援計画を作成する段階に入ってきました。

 それでこれまでの研修で出てきた課題について整理して、今後の対応を計画しておこうと思います。

 今、連続研修では基礎的な理論を学んでいただきながら、機能的アセスメントと行動支援計画を立案するために、このような「ストラテジーシート」に記入していくという演習を行っています。

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 そしてその方略は実際に各施設で実行していただき、今後の研修では行動記録を基に、評価と修正を繰り返すということになります。

 しかしながら、実際に研修の中で「ストラテジーシート」の作成を行う中で、いくつかの課題に直面することになりました。
 以下、直面した問題と今後どう対応するかのアイデアのメモ。

 何らかの形で読者の皆さまのお役に立てば嬉しいです。


〇結果事象のところに行動の随伴性には関係のない「行動の結果」を記入してしまう

(例)「自傷した結果、叩いたところが腫れ上がる」など、結果事象が強化なのか弱化なのか不明な記述(「行動の機能」という観点が欠けている)

(理由)
・「行動の随伴性」や「行動の機能」に関する理解が十分ではない
・ストラテジーシートの各セルの意味やストラテジーシート全体を作成する目的を十分理解していない

(対策)
・架空事例を用いたストラテジーシート作成の練習を数事例分繰り返し行う
・「結果事象」の箇所には「対象者がその行動によって『何を得ているのか?』(正の強化)『何から逃れているのか?』(負の強化)を記入するようにインストラクションする
MASなどの評価尺度を用いて「注目獲得」「要求」「逃避」「感覚」のどの機能に該当するか目星をつけてもらってから記入してもらう
・「ある刺激なし(刺激あり)→ある刺激あり(刺激なし)」で随伴性を記述する「行動分析学入門」で用いられている「随伴性ダイアグラム」を用いる


〇「結果事象」に記入する内容を考え出せない

(例)記入者から「私は問題行動に対して何も与えないし、注目もしないし、逃避もさせないので、ここに何を書けばいいのかわからない」という質問が出る

(理由)
・他の人が何らかの強化をしているが、ストラテジーシートを記入している本人はそれを知らない
・「消去バースト」で行動が維持しているので、ストラテジーシートを記入している本人には結果事象がわからない
・実は強化しているが、本人がそれに気づいていない

(対策)
MASなどの評価尺度を用いて「注目獲得」「要求」「逃避」「感覚」のどの機能に該当するか目星をつけてもらってから記入してもらう
・自分以外の人物の対応も視野に入れるようインストラクションする
・必要に応じて関係者会議を計画する
・必要に応じてSVによる直接観察を計画する


〇「代替行動」や「望ましい行動」を考え出すことができない

(例)記入者から「ここに何を書けばいいのかわからない」、「思いつくものはあるが、実際やってみてうまくいかなかった」「思いつくものはあるが、施設の現状では無理」という質問が出る

(理由)
・指導を試みたが失敗した経験がある、あるいは最初からとても無理だと考え、その行動が最初から選択肢から省かれてしまっている
・アイデアとして出された代替行動がその環境内で許容できないと考えられるので、最初から選択肢から省かれてしまっている(例:施設から脱走して近所のコンビニで無銭飲食してしまう利用者さんに対して、施設内で「お買い物」をしてもらって好きな食べ物や飲み物を得ることができるようにすることを思いついたが、1人だけにそのような特別扱いはできない)
・その環境内においては物理的に不可能であるので、最初から選択肢から省かれてしまっている(他の利用者さんの奇声が気になり攻撃行動を起こす方に、静かな環境に移動するよう要求させたいが、そのような静かな環境自体が用意できないなど)

(対策)
・最初はとりあえず思いついたものを書いてみる(ストラテジーシートを空白のままにしない)
・「過去の失敗策」には改善の余地があるかもしれないので、失敗した経緯をSVに相談して改善策を考える
・単に失敗を予期して候補から外している場合には、次善策が思いつかないのであれば、最善を検討しながらとりあえずやってみる
・「行動障害よりはマシであればOK」という観点を強調して、かなり柔軟に「許容できない」とされるその行動は、「本当に許容できないのか?」「行動障害の方が許容できるのか?」を施設全体で考え直してもらう
・あるいは「許容できる条件」について整理してもらう
・例えば「静かな環境」を用意するのが難しくても、耳栓やヘッドフォンなどで騒音を遮断するなど、全く別の方法によって目的を達成できないかを検討する
・利用者のスキルによって難しいと代替行動については、ツールやテクノロジーによって補完できないかどうかを検討する(必要であれば、その予算を確保する方法を検討する)


〇「望ましい行動」に対する正の強化子を設定することに抵抗感を示す

(例)記入者から「ご褒美を設定するとかえってそれにこだわるようになる」、「他の利用者が納得しないので特別扱いできない」、「ご褒美はずっと続けないといけないのでしょうか?」などといった懸念が示される

(理由)
・集団生活においては、メンバー間の「平等性」が重視される
・「お楽しみの設定」に関わる問題が実際に以前に起きており、その結果「刺激を与えないよう」制限してきた経緯がある
・記入者が「ご褒美で釣ることは良くないことである」という価値観を持っている

(対策)
・行動支援のゴールは「QOLの向上」であることを再度確認する
・「正の強化子」は「もの」に限定されないが、文脈に合えば「もの」的なご褒美も問題ない(我々の生活にもそのような例がたくさんある)ことを共通理解する
・「特別扱い」が難しいのであれば、その強化子をメンバー全員に提供できないか検討する
・それが難しければ、ニーズのある個人に「こっそり」提供することを考える
・強化子を設定することによる新たな問題が起こる可能性は確かにあるが(過度にそれを要求するようになったり、消去抵抗による行動障害など)、それは予測可能で解決可能な「壁」であり、新たなコミュニケーションスキルやセルフコントロールを学ぶチャンスであることを共通理解する
・それでもやはり甚大な被害が予想される場合は、別の方法を検討する


〇問題行動に複数の機能があるために、情報を整理できず計画がごちゃごちゃしてしまう

(理由)
・私が事前にきちんと解説していなかったため(反省)

(対策)
・各機能ごとに別のストラテジーシートを作成する
・機能の種類が多く、結果として方略が多くて複雑になりすぎる場合は、優先順位をつけて取り組む行動の機能を限定する


 私がここまでで学習したことは、行動支援計画の立案には時間がかかるということ(協議しながらストラテジーシートを埋めていくだけで5時間は必要であると思います)、そして経験がない作成者に対しては、かなりのプロンプトとフィードバックが必要であるということです。

 実感としては基礎研修で学んだ内容を、実際の支援計画に落とし込むのに「ちょっとしたプロンプトがたくさん必要」という感じです。
(ちょっと手がかりを出せば、「ああ、あれはここでこういう風に使うんですね」とすぐに理解していただけることが多い)

 今後は、施設や機関で方針を統一するために、そしてチームとして支援計画を立案し実行するために、各施設における組織マネージメントをどのように支援していくかということが課題になると思います。

 残りの連続研修もより良い研修にするために頑張りたいと思います。

 関係者の皆さま方、どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m


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【2014/09/01 11:03】 | 行動分析学
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